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  観覧車回れよ回れ想ひ出は君には一日(ひとひ)我には一生(ひとよ)

    栗木京子『水惑星』(1984年)



 「回れよ回れ」は慣用句だと直感的に感じるのはどういうわけだろう。リフレインの間に「よ」を挟むことで、4・3の7音という伝統的な歌謡調におさまるためか。しかし、先行例を探すと、案外見つからない。昨年度のセンター試験の問題にも採られた牧野信一の短編小説『地球儀』に、「回れよ独楽(こま)よ、回れよ回れ」という言葉が出てくるのは、私がやっと見つけた例の一つである。

 昔のNHK「みんなのうた」に「矢車草」という歌があって、歌詞の冒頭は
 

まわれよまわれ 矢車草



というのだった。先行例としては、こちらのほうがおもしろい。栗木さんの一首と同時代のものであるし、牧野信一よりもよほど大衆的で、栗木さんが知っていた可能性も高い。ここから先は証明不可能な趣味の話になるが、栗木さんの一首はこの「矢車草」にインスピレーションを得ていたのではないか、というのが私の想像。2年前にテレビで再放送された際に、ブログ『玉葉06』がその映像について次のように報告している。
 

 ソフトフォーカスの中を自転車が走ってくる夢のようなシーンから始まります。(略)くるくる回る風車と優しく揺れる矢車草の映像が美しいですねえ。自転車と電車の車輪もクルクル回わり、最初のシーンにぐるっと回って自転車が走り去って行きました。

( ブログ「玉葉06」みんなのうた発掘スペシャル 第二夜
 http://gyokuyo.tea-nifty.com/blog/2012/03/post-8614.html )



 歌詞だけでなく、「くるくる回る風車」や「自転車と電車の車輪」の映像からも影響を受けていたのではないか。なお、歌詞の続きには「あの子のすきな紫を ぼくはかぞえて指に折る」といった淡い恋の味付けもある。

 ウィキペディア「 矢車草_(みんなのうた) 」の項( http://ja.wikipedia.org/wiki/矢車草_(みんなのうた) )によれば、「矢車草」の放映時期は、1974年6月・7月。一方、栗木さんの歌の初出は、角川『短歌』1975年8月号。角川短歌賞に応募して次点になったもので、締切りは同年3月31日だった。

 こんな話はつまらないと感じる向きは、下に貼り付けたユーチューブ動画を再生されたい。何度も繰り返される「まわれよまわれ」というフレーズを聴いているうちに、これなくして観覧車の一首もないという気分になること、請け合いだ。

 「矢車草」を記憶しているかどうか、栗木さん本人がどこかに書いてくれないだろうか。


参考:

○「矢車草」合唱団京都エコー




○NHK放映時の映像
http://cgi2.nhk.or.jp/minna/search/index.cgi?id=MIN197406_05



(2014.3.29 記)


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