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 何かのシンポジウムか、あるいは大学のゼミ発表か、質疑応答の議論が白熱するなか、一人の発言がその場の空気を変える。全体の論調はその人物が転換させた方向に走り出す……。
 

夕刻の質疑応答 熱風のただ中にパイロットを生み出して



 隣りの部屋に棲む歌人が詠んだ一首。彼の歌集の72頁にある。「パイロット」の意味は飛行機の操縦士でも悪くないが、ここでは水先案内人と解しておこう。そのほうが、「熱風」との取り合わせの点で具合がよい。「生み出して」というのは、パイロットに擬される存在を質疑応答のやり取り自体が生み出した、ということだ。なお、比喩表現としては、このパイロットは一応、型通りだろう。

 この歌の魅力は、シンポジウムの会場だかゼミの教室だかの閉鎖空間から、熱風が肌を焼く港へふいに連れ出される瞬間のカタルシスにある、というのが私の見立てだ。

 『短歌』2月号掲載の松村正直さんの歌壇時評「内向きな批評を脱して」に、この歌に対するコメントがある。いわく、
 

 ほとんど意味不明で読解の手掛かりも掴めない。



 引用のマジックで目茶苦茶辛口に見えるが、実際は理性的に書かれた文章で、同じ歌集の別の歌はちゃんと褒めてある。ただ、天の邪鬼は「意味不明」と言われると、がんばってその意味を読み解きたくなるのだ。


(2014.3.5 記)

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コメント
33
なるほど、シンポジウムなどの場面を想像して、「パイロット」を比喩的な水先案内人と受け取ると、だいぶ歌の輪郭が見えてきますね。

「現代短歌新聞」3月号でも、内山晶太さんが「果物屋になる人たちへ 遠い日のあけびをいつか売ってください」について書いていて、学ぶところがありました。

35
二晩続けてパソコンに触らなかったのでご返事遅れてしまいました。

この歌の「パイロット」、一章のタイトルに採っているということは、作者自身が気に入っているのでしょうね。「現代短歌新聞」は書店で買えないので、全然見たことがありません。一度購読してみようかと思っています。

松村さんの「内向きな批評を脱して」は服部真里子さんになかなか厳しいですね。服部さんから反論があればおもしろいですが。

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