最新の頁   »   会津八一  »  会津八一の年譜について(1)入歯
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 会津八一の年譜は、1980年代に刊行された十二巻本『会津八一全集』(中央公論社)収載のものが一番正確で詳しい。したがって、八一の生活と文学活動の時期を確かめたいときは、まずこれを見ることになる。しかし、そもそも年譜は編者の方針によって編集されたものであり、いうまでもなくそれは事実そのものではないのだから、完全無欠の年譜というものはあり得ない。記載から漏れたところに真実があることもある。八一の年譜の場合も同様だ。

 この十二巻本全集の年譜は、八一本人が最晩年に記した自筆年譜を第一の資料にしている。自筆年譜の内容は、50年代に刊行された九巻本『会津八一全集』(八一の最初の全集。中央公論社)によって知ることができる。こちらの全集収載の年譜は自筆年譜を底本とし、編者によれば「印行にあたつて厳格に底本を踏襲した」という。

 さて、両者を比較すると、一見この上なく詳細に見える十二巻本全集の年譜も、実は自筆年譜のすべての記事を採ったわけでない、ということが分かってくる。たとえば、自筆年譜の1951年(70歳)の項に

 入歯。



という謎の二文字がある。十二巻本全集の年譜には、これに相当する記事がない。

 いや、謎ではない。これは、初めて入れ歯を入れたという意味だ。本人にとって重大事件だったということは理解できるが、年譜の記事としては空前絶後。十二巻本全集の年譜の編者は、苦笑しながらその不採用を決めたことだろう。

(続く)


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