最新の頁   »   短歌一般  »  昭和短歌の稀覯本(2)『短歌作品』
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 『エスプリ』が2号で廃刊になった後、その主張を受け継ぐ雑誌として1931(昭和6)年1月に創刊されたのが『短歌作品』である。そのあたりの事情を木俣修『昭和短歌史』は次のように説明している。

 これ(『エスプリ』廃刊——引用者註)を機に新芸術派運動というものが高まって、やがて「芸術派クラブ」というものが生れた。そのメンバーは筏井嘉一・前川佐美雄・石川信雄・小笠原文夫・中野嘉一・蒲地侃・木俣修らであった。(略)そして、その中の前川・石川・小笠原・蒲地・木俣らは十二月、短歌作品社をおこし、翌六年一月雑誌『短歌作品』を創刊した。筏井は加わっていないが、定型を守持する芸術派の集合したはじめての雑誌ということができるであろう。



 こうして創刊された『短歌作品』であるが、現代の私たちがことに関心を引かれるのは、ここに佐美雄の歌や評論が載り、『植物祭』(1930年)に続く時期の歌風を知ることができる点だろう。また、木俣は触れていないが、斎藤史もメンバーの1人だった。『魚歌』の初期の歌の初出誌であるという点でも価値が高い。

 この雑誌も、今日では稀覯本になっている。国立国会図書館も、日本近代文学館も、また岩手県北上市の日本現代詩歌文学館も、全然所蔵していない。古書店でも見かけない。私は、前に「斎藤史「濁流」論」(『殺しの短歌史』水声社、2010.7)と題する論文を書くために『短歌作品』掲載歌を見たいと思い、方々探し回ったことがある。そのとき、ようやく1巻2号(1931年2月)、2巻1号(1932年1月)、同3号(1932年3月)の3冊を見ることができた。それも、かなり手間がかかったのである。

 ところが——日本近代文学の研究者であり、『日本歌人』で歌の実作もされている石原深予さんに「前川佐美雄『日本歌人』目次集(戦前期分)」(私家版、2010.2)という著作があることを最近知った。『殺しの短歌史』より前に発行されていたもので、私はその存在に今まで気付いていなかったのである。これを見て驚いた。『日本歌人』のほかに、その前身として『短歌作品』も、全8冊中7冊分の目次が紹介されているのだ。

 すばらしい研究成果だと思う。その7冊は、まさにこの世に現存していることが確かめられたわけである。

 なお、私がすでに見ていた3冊分は、いずれもその7冊のうちに含まれている。石原さんもまだ確認していない1冊は、1巻3号。この号こそ本物の稀覯本ということになろう。


(2014.1.19 記)


 石原深予さんのお名前の誤記を訂正しました。

(2014.1.25 追記)


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短歌作品
今あきつ書店に『短歌作品』4冊が在庫しているようです。

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