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 誰のどの歌を選ぶか。時代によって、選者によって、選の方針によって、企画の趣旨によって変わるものだ。今回の『新・百人一首』が選んだ歌人は、平成以降の類似の企画とどの程度共通し、どの程度違うのか、次の2編と比較してみよう。

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●『短歌俳句川柳101年』(『新潮』1993年10月臨時増刊。三枝昂之選。1892年から1992年までの101年間の歌集について、各年1冊、歌人1人につき1冊のルールで、合同歌集3冊のほかに98人分を選んでいる。)

●『名作の表現〈実例〉鑑賞』(朝倉書店、2012年6月。明治から平成初年までの歌人100人を選び、1首鑑賞をおこなう。)

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さて、『新・百人一首』では、

a群:『短』『名』の両方と重なる
 ——65人
(50音順、以下同)

・会津八一  ・阿木津英  ・石川啄木
・伊藤左千夫 ・上田三四二 ・大西民子
・岡井隆   ・岡野弘彦  ・岡本かの子
・落合直文  ・小野茂樹  ・尾上柴舟
・春日井建  ・加藤治郎  ・金子薫園
・川田順   ・河野裕子  ・岸上大作
・北原白秋  ・木下利玄  ・葛原妙子
・窪田空穂  ・窪田章一郎 ・小池光
・古泉千樫  ・五島美代子 ・近藤芳美
・斎藤史   ・斎藤茂吉  ・佐佐木信綱  
・佐佐木幸綱 ・佐藤佐太郎 ・島木赤彦
・釈迢空   ・高安国世  ・俵万智  
・塚本邦雄  ・土屋文明  ・坪野哲久  
・寺山修司  ・土岐善麿  ・中城ふみ子  
・永田和宏  ・長塚節   ・中村憲吉  
・馬場あき子 ・福島泰樹  ・穂村弘
・前登志夫  ・前川佐美雄 ・前田夕暮  
・正岡子規  ・道浦母都子 ・宮柊二  
・武川忠一  ・森岡貞香  ・安永蕗子  
・山川登美子 ・山崎方代  ・山中智恵子  
・与謝野晶子 ・与謝野鉄幹 ・吉井勇  
・吉野秀雄  ・若山牧水
 

b群:『短』『名』のいずれか1つと重なる
 ——16人


・明石海人  ・伊藤一彦  ・栗木京子  
・小中英之  ・今野寿美  ・三枝昂之  
・坂井修一  ・高野公彦  ・竹山広  
・玉城徹   ・富小路禎子 ・永井陽子  
・花山多佳子 ・原阿佐緒  ・三ヶ島葭子  
・水原紫苑


c群:『短』『名』のいずれとも重ならない
 ——19人


・秋葉四郎  ・石川不二子 ・岩田正  
・大島史洋  ・岡部桂一郎 ・尾崎左永子  
・皇后美智子 ・河野愛子  ・小島ゆかり  
・小高賢   ・篠弘    ・島田修三  
・清水房雄  ・浜田到   ・松平盟子  
・村木道彦  ・明治天皇  ・米川千嘉子  
・渡辺松男


選外:『短』『名』共通の入選歌人を選ばない
 ——12人


・青山霞村  ・新井洸   ・太田水穂  
・片山広子  ・加藤克巳  ・木俣修  
・島田修二  ・田谷鋭   ・服部躬治  
・樋口一葉  ・宮沢賢治  ・森鴎外



 比較したのが2編と少ないからあくまで参考程度のグループ分けだが、『新・百人一首』の傾向を判断する1つの材料にはなるだろう。100人中81人がa・b群に入ることをもって、穏当な選と見るか。あるいは19人がc群であること、選外が12人にのぼることをもって、別の見方をすべきか。

 私は新味のある選だと思う。それは、「近代歌人と現代歌人の割合」が「三対七」という同書の方針のためかもしれない。20年後に同種の企画を別の選者でおこなったとして、このc群から入選する歌人はいるだろうか。もし少なからぬ人数が再び入選するようであれば、それが今回の選者の眼力の証明になる。もし1人も入選しないとなれば、それは……いや、そんなことにはなるまい。

 なお、3編に共通して選ばれたa群65人は、今日まで作品が読まれ続けている歌人と見なしてよいだろう。岡井隆は本書の座談会記録で、

 まあ、プロの歌人なら誰が選ぼうと九五パーセントは一致すると思いますね。



と発言しているが、上の「65」という数字が示唆するように、「一致する」割合は実際には「95%」をかなり下回るのではないかと思う。

 ほかに私が関心をもつのは、選外になった歌人である。従来の各種アンソロジーからまず外れることのなかった太田水穂、加藤克巳、木俣修、島田修二、田谷鋭といった人が、今回の『新・百人一首』からは外れている。これらの人たちの歌は今後次第に読まれなくなっていくのか、あるいはそうでもないのか。短歌への関心を失わないかぎり、私自身は田谷さんの歌をずっと愛唱すると思う。

 
生活に面伏すごとく日々経つつセルジュリファールの踊りも過ぎむ

子をもちて二十三年わが得たる慰藉限りなし与ふるは無く
 



(2014年1月11日 記)

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