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廟行鎮はきさらぎさむき薄月夜おどろしく三人(みたり)(は)ぜにたるはや

  北原白秋『白南風』(1934年)


 1932(昭和7)年の第一次上海事変のいわゆる「爆弾三勇士」を取り上げた一首。本書は三人の兵士の戦死が新聞報道等によって「たちまち軍国美談」にされたことに言及しつつ、

 掲出歌もそうした報道をもとに詠まれたものだろう。


とし、

 「三人爆ぜにたる」という直接的な表現には、軍国美談と同じく彼らの勇気を讃える心情が表れている。


と解している。著者のいう「よい歌」の条件——「その時々の作者の心情」をよく表現している——を備えているということになろうか。

 しかし、「軍国美談と同じく」云々ということは、報道に影響されて戦死を美化した歌と言い換えることもできるわけだ。今の私たちの常識に照らして、それを「よい歌」に認定することはなかなか難しい。結局、掲出歌もまた「歴史を知る」ための一首として本書に採られていると私は推測する。

 ところで、本書は各歌をおおむね初出順に排列しているが、白秋の一首より後にはその「よい歌」に認定しがたい歌が見えない。言うまでもなく、日米開戦以降にこそ戦争を賛美する歌はおびただしく作られた。本書はそれらを採ることはしないのだ。今日に至ってなお太平洋戦争は歴史として取り扱うには近すぎる過去であり、それに触れるのには一定の配慮を要するからだろう。


(2019.3.3 記)

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