最新の頁   »   短歌一般  »  ハヅカシとオモハユシ
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 朝日新聞が元旦以来、一面トップに繰り返し昭和天皇の歌稿発見の記事を載せていた。ずっと以前から用意し、検討を重ねてきた記事に決まっているのだから、速報の体裁など取らず、一本のしっかりとした内容の記事にまとめればよかったのにと思う。

 ただ、7日付朝刊の記事「昭和天皇 和歌磨いた跡」には考えさせられた。昭和天皇の晩年の歌は御自身で推敲、側近が清書、相談役の岡野弘彦がそれに朱書きで助言を書き入れる、といった過程を経て完成したという。

 記事に引かれている例歌は二首で、一首目は、

うれはしき病となりし弟をおもひかくしてなすにゆきたり


 発見された清書原稿では、この「おもひかくして」に朱書きで「「(おもひつつひめて)」「秘」との書入れがあり、朝日の記者は相談役の助言と推定している。昭和天皇御製集『おほうなばら』(読売新聞社、1990)には、この書入れの通りに改めた形で載っているとのことだ。

 この助言の意図は分かりやすい。原歌では「弟を」と「おもひかくして」のいわゆる係り受けがうまくいっていないので、そこを手直しする案を出したのだ。

 では、二首目、

國民の祝ひをうけてうれしきもふりかへりみればはづかしきかな


はどうか。在位六十年記念式典の際の歌だそうで、清書原稿では「はづかしき」に朱書きで「おもはゆき」との書入れがあるという。この一首が後に公表されたかどうか、記事では不明。こちらの方は幾分疑問の残る助言と言ってよいかもしれない。ハヅカシの主な意味は、

 過ち・罪などを意識して面目ないと思う。(広辞苑、以下同)


 もしくは、

 何となくてれくさい。


 後の意味では「ふりかへりみれば」(=過去を振り返ってみると)とつながらず、一首が空中分解する。だから、ここは前の意味に取るほかない。一方、オモハユシは、

 てれくさい。きまりがわるい。


の意味で、ハヅカシの後の意味とほぼ同じ。この単語をハヅカシの前の意味のように解するのは難しい。したがって、助言通りに「ふりかへりみればおもはゆきかな」としてしまったら、この一首は意味が通らなくなる。

 思うに、それをも承知の上での助言であったか。


(2019.1.11 記)


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