同号で心にとどめた歌、4首。まず、
年鑑類を見ると、山本さんは1926(大正15)年生まれ。「さらはる遠き」の句割れが読みにくいし、特にすぐれた歌とは思わないのだが(エラそうに、すみません)、昔「横抱き」でさらわれたことがあるという内容に興味を引かれる。いったいどんな状況だったのだろう。作者には、この「横抱き」事件をテーマにした連作を作ってほしいと思う。こういうちょっとした願いは、たいていかなわないままで、自分でも忘れてしまうが。
実家で暮らしていたころ、ときどき母の友人が泊まりがけで遊びにきた。この歌は、ああいった情景を思い浮かべればよいのかなと思う。そして、この歌を70歳くらいの男性歌人に朗読してもらうのも一興か。
ああ、これはよい歌。こういう歌が何首かあれば、雑誌を買ったかいもある。ジブリの『風立ちぬ』の世界にちょっと似ているが。
さて、水野昌雄選「読者歌壇」(12月)の秀作欄に次の歌が、次の作者名で載っている。
この作者はどう考えても、国文学者の宮崎荘平氏である。実作は素人だからということで、読者欄に投稿したのだろう。氏には専門の平安文学以外に、土屋文明関係の著書もあるのだが、選者や編集者は気付かないものか。選者評は次のとおり。
こんなお言葉を受けることなど日ごろあまりないだろうから、宮崎先生も新鮮な気持ちになったかもしれない。
(2013.11.27 記)
横抱きにさらはる遠き遠き日の出来事いまは耀ひて見ゆ
山本かね子
年鑑類を見ると、山本さんは1926(大正15)年生まれ。「さらはる遠き」の句割れが読みにくいし、特にすぐれた歌とは思わないのだが(エラそうに、すみません)、昔「横抱き」でさらわれたことがあるという内容に興味を引かれる。いったいどんな状況だったのだろう。作者には、この「横抱き」事件をテーマにした連作を作ってほしいと思う。こういうちょっとした願いは、たいていかなわないままで、自分でも忘れてしまうが。
秋されば狐恋しや訪ね来て一夜(ひとよ)寝て去るをみなは狐
栗木京子
実家で暮らしていたころ、ときどき母の友人が泊まりがけで遊びにきた。この歌は、ああいった情景を思い浮かべればよいのかなと思う。そして、この歌を70歳くらいの男性歌人に朗読してもらうのも一興か。
イーゼルを据ゑたる草の緑よりまづ湿りきて昼の雨降る
同上
ああ、これはよい歌。こういう歌が何首かあれば、雑誌を買ったかいもある。ジブリの『風立ちぬ』の世界にちょっと似ているが。
さて、水野昌雄選「読者歌壇」(12月)の秀作欄に次の歌が、次の作者名で載っている。
今日よりはあとふり返らず進まんと八十(やそぢ)となりし朝(あした)に思ふ
宮崎荘平
この作者はどう考えても、国文学者の宮崎荘平氏である。実作は素人だからということで、読者欄に投稿したのだろう。氏には専門の平安文学以外に、土屋文明関係の著書もあるのだが、選者や編集者は気付かないものか。選者評は次のとおり。
抽象的ではあるが、わかる。回顧的にならず、前向きに生きようとするの(ママ)結構。
こんなお言葉を受けることなど日ごろあまりないだろうから、宮崎先生も新鮮な気持ちになったかもしれない。
(2013.11.27 記)
- 関連記事
NEXT Entry
NEW Topics