最新の頁   »   短歌一般  »  『現代短歌』2013年12月号を読む(2)横抱き・狐・イーゼル
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 同号で心にとどめた歌、4首。まず、

横抱きにさらはる遠き遠き日の出来事いまは耀ひて見ゆ

  山本かね子



 年鑑類を見ると、山本さんは1926(大正15)年生まれ。「さらはる遠き」の句割れが読みにくいし、特にすぐれた歌とは思わないのだが(エラそうに、すみません)、昔「横抱き」でさらわれたことがあるという内容に興味を引かれる。いったいどんな状況だったのだろう。作者には、この「横抱き」事件をテーマにした連作を作ってほしいと思う。こういうちょっとした願いは、たいていかなわないままで、自分でも忘れてしまうが。

秋されば狐恋しや訪ね来て一夜(ひとよ)寝て去るをみなは狐

  栗木京子



 実家で暮らしていたころ、ときどき母の友人が泊まりがけで遊びにきた。この歌は、ああいった情景を思い浮かべればよいのかなと思う。そして、この歌を70歳くらいの男性歌人に朗読してもらうのも一興か。


イーゼルを据ゑたる草の緑よりまづ湿りきて昼の雨降る

  同上



 ああ、これはよい歌。こういう歌が何首かあれば、雑誌を買ったかいもある。ジブリの『風立ちぬ』の世界にちょっと似ているが。

 さて、水野昌雄選「読者歌壇」(12月)の秀作欄に次の歌が、次の作者名で載っている。

今日よりはあとふり返らず進まんと八十(やそぢ)となりし朝(あした)に思ふ

  宮崎荘平



 この作者はどう考えても、国文学者の宮崎荘平氏である。実作は素人だからということで、読者欄に投稿したのだろう。氏には専門の平安文学以外に、土屋文明関係の著書もあるのだが、選者や編集者は気付かないものか。選者評は次のとおり。

 抽象的ではあるが、わかる。回顧的にならず、前向きに生きようとするの(ママ)結構。



 こんなお言葉を受けることなど日ごろあまりないだろうから、宮崎先生も新鮮な気持ちになったかもしれない。


(2013.11.27 記)

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