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2 収録論文と章立て


 単行本『現代短歌 美と思想』(a)と本書(b)の章立ては、それぞれ次のようになっている。


a 『現代短歌 美と思想』


美と思想
実感的前衛短歌論:辞の変革をめぐって

戦後短歌史論
続戦後短歌史論
昭和短歌史

現代短歌史論序説:『新風十人』と危機時代の美意識をめぐって
現代短歌と近代短歌
昭和十年代短歌史評価の問題:主として太平洋戦争下の〈空白〉に関する序論的考察 

短歌否定論の考察:昭和短歌史への一視点
新歌人集団と戦後派
短歌滅亡論をめぐって
楯としての前衛歌集

ゆがめられた戦後短歌史:前衛否定説と近代短歌伝統の絶対化
短歌批評の可能性:「文学史とは何か」の問題にふれつつ再び玉城徹を批判する


b 『菱川善夫著作集』第四巻


美と思想
実感的前衛短歌論—辞の変革をめぐって

戦後短歌史論
続戦後短歌史論
昭和短歌史
楯としての前衛歌集

現代短歌史論序説:『新風十人』と危機時代の美意識をめぐって
現代短歌と近代短歌
昭和十年代短歌史評価の問題:主として太平洋戦争下の〈空白〉に関する序論的考察 

ゆがめられた戦後短歌史:前衛否定説と近代短歌伝統の絶対化
短歌批評の可能性:「文学史とは何か」の問題にふれつつ再び玉城徹を批判する

『新風十人』の美と思想—屈折表現の基盤と背景
昭和十年代の花(講演)—『新風十人』の美と思想
現代短歌における美と思想



 『現代短歌 美と思想』のうち、「短歌否定論の考察:昭和短歌史への一視点」「新歌人集団と戦後派」「短歌滅亡論をめぐって」の三本を本書は収録していない。戦後の比較的早い時期、つまり塚本邦雄台頭以前の時期を主に扱った論考だ。未収録の理由はよく分からない。単行本の他の論考に比べて、内容が劣っているわけではないと思う。いずれも著者の根源的な思考が現にその場で繰り広げられるような生々しさに満ちていて、読みごたえがある。単行本の他の論考にも共通する特徴である。

 この三本の代わりに本書が新たに収めたのは、『新風十人』と戦後短歌との関係に焦点を当てた論考三本。こちらは実のところ、やや物足りなく感じられた。その他の論考が刺激的で、期待が大きいためにそう感じてしまうのかもしれない。すでに「現代短歌史論序説:『新風十人』と危機時代の美意識をめぐって」等で提示した見方を平易に書き直し、具体的な作品分析で補強する。堅実な内容だが、逆に言えば予定調和的であるとも思う。

 これらの収録論文の違いは結局、著者が本書中で何に一番照明を当てたかったかを表しているのだろう。著者は目的は果たしたが、一冊の本としての価値は、残念ながら『現代短歌 美と思想』よりも若干後退したと私には思われる。


(2018.2.26 記)

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コメント
240
もうご存知かもしれませんが、忍足ユミ氏が去年10月『天にあこがる-石川信雄の生涯と文学-』を上梓されています。

242
コメントありがとうございます。忍足さんの著書、雑誌連載時から楽しみにしていて、単行本もすぐに読みました。貴重な仕事だと思います。

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