最新の頁   »   短歌一般  »  小池光『石川啄木の百首』覚書(5)
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途中にて乗換の電車なくなりしに
泣かうかと思ひき。
雨も降りてゐき。


 『悲しき玩具』のこの一首について小池は、

 当時の都電は何時まで走っていたのかは分からないが、歌から漂う気分は深夜、午前零時を過ぎているようにも思われる。(153頁)


と記すのだが、明治に「都電」は……。ふらんす堂には編集者がいないのだろうか。そもそも市電ですらない。

 岩城之徳『啄木歌集全歌評釈』(筑摩書房、1985年)を見ると、1910(明治43)年10月20日付宮崎郁雨宛書簡の一節、

 今夜は夜勤だつた。社を出たのが十二時十五分、やうやく赤電車に間に合つて乗つたが、乗換はもうない。雨の中を上野広小路でをりた、


を引いている(300頁)。銀座四丁目から東京電車鉄道に乗り、上野広小路で坊っちやんの街鉄に乗り換えて本郷三丁目で降りるのが帰宅の経路だったのだろう。赤電車は最終電車。時刻は小池の推測通り、午前零時代である。

 小池は岩城の評釈を読まずにこの文章を書いたようだ。


(2017.6.30 記)

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