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 前の記事で牧水の1首について書いたのを知り合いが読んで、メールをくれた。

 その1首に、

   小諸懐古園にて

という註記が付いていることはどう考えるか。「ほろびしものはなつかしきかな」の「なつかしき」はやはり「懐旧」を意味しているはずだ。



といった内容である。意見をもらえるのがうれしい。だれかと話しているうちに考えが深まったりまとまったりするのだと思う。まあこちらの器が小さくて、そうならないこともあるけど。

 この註記には触れておくべきだったなと反省。ただし、前の記事を訂正する必要はないと考えている。確かに手元の大辞林で「懐古」を引くと「懐旧」とあり、「懐旧」を引くと「懐古」とある。しかし、この二語の意味は同じではないだろう。

 会津八一『南京新唱』(1924年)に「法華寺懐古」と題する連作があって、それは例えば、

ふぢはらのおほききさきをうつしみにあひみるごとくあかきくちびる



といった歌なのだが、要するに目前の朱唇をたよりに古代の皇后のそれを想像するのである。「懐古」の語意が、自身の体験を思い出す「懐旧」と異なるのは明らかだ。

【懐古】現在失われている昔の情緒や風俗などを理想的なものとして復古の策などを考えたりすること。

【懐旧】みんながまだ若かった昔をなつかしく思い起こすこと。



 新明解国語辞典より。新解さんの説明は細かくて分かりやすい。細か過ぎて、かえって種々のニュアンスをとりこぼしているきらいがないでもないが。

 小諸懐古園は、廃藩置県の後、旧小室藩士らが本丸跡に社を祀り「懐古園」と名付けたのが始まりであるという(参考リンク「懐古園の歴史」)。この「懐古」の意味が藩士個々人の体験の追想に狭く限定されないのは、いうまでもない。

 懐古園にちなんだ牧水の「ほろびしものはなつかしきかな」もまた、「滅び去ったものが慕わしい」のであって、「滅び去ったものが思い出されて慕わしい」のではないだろうと思う。

 どうでもいいことだろうか?


(2013.11.22 記)

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