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 かたはらに秋ぐさの花かたるらくほろびしものはなつかしきかな

   若山牧水『路上』(1911年)



 田中教子さんがこの歌について、

 ……「ほろびしもの」の「なつかしさ」を詠んだものである。

(短歌周遊逍遥 http://blog.goo.ne.jp/sikyaku_himekuri_tanka/e/965821ef02c22437a25c2af94b011296



と書いているが、そんなに簡単にすませられる表現だろうか。

 「なつかし(=なつかしい)」という形容詞は、単に「慕わしい」というのが原義で、「昔が思い出されて慕わしい」というのは後になって生まれた意味だという。現代ではほとんど後の意味でしか使われないが、明治期にはまだ原義のとおりに使われることも多かった。一葉全集の「なつかし」の用例を調べたことがあるが、結果は単純明快で、一葉の小説や和歌に出てくる「なつかし」はほぼすべて、懐旧の意を含まない「慕わしい」なのだった。

 掲出歌は明治の終わりのころの作だが、結句はどちらの意味か。「ほろびしもの」は過去に属するから、この結句を懐旧の意で解することもできるかもしれないが、私は単に「慕わしい」の意味だと見る。

 滅び去ったものは今を盛りのものよりもいっそう慕わしい……、というように読みたいからである。いうまでもないが、「今を盛りのものよりもいっそうその昔が思い出されて」というのでは、言葉が意味をなさない。

 「ほろびしものは」の「は」が私の読み方を支持してくれていると、私は思っている。


(2013.11.21 記)

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