最新の頁   »   柴生田稔  »  柴生田稔『春山』初版本の自主規制(6)
RSSフィード iGoogleに追加 MyYahooに追加
 わずか数首について書くだけで二ヶ月かかり、フラフラ、ヘトヘト。残りは現時点での覚書のみ。

故知らず露兵は送られ戦ひしと我等聞かされき曾ての時は


 初出は『アララギ』1937年1月号。『春山』の初版本に収録されず、改版本では昭和11年の「つゆじも」十二首中の六首目である。歌意は〈ロシア兵は理由も知らされないまま戦地に送られ戦った、とわれわれが少年だったころは大人から聞かされたものだ〉。上句はロシアの王室や政府を憎んで前線の兵士を憎まない、といった考え方だろう。以前はもっと他国の民衆に対する同情があったのに、現在は——といった認識が作者のうちにあって、それを一首の言外に表そうとしている。愛敵思想と見られる恐れのあることが初版本に未収録の理由か。

にやにやと伯林あたりうろつきゐるその顔がまた眼に浮び来る


 初出は『アララギ』1939年10月号。『春山』の初版本に収録されず、改版本では昭和14年の「夏より秋へ」十二首中の四首目。誰の「顔」を指すのか、私はまだ読み取れないでいる。したがって、初版本に未収録の理由もよく分からない。引き続き、課題としたい。

帽高き青年将校に向ふときのその須臾の間(ま)の心のうごき


 初出を知らないが、『アララギ』以外の雑誌・新聞か。『春山』の初版本に収録されず、改版本では昭和15年の「屋根」十五首中の十二首目。「心のうごき」がどのような心情か、具体的に明かさないので検閲を気にかける必要もないように思えるが、軍人批判と解されることを恐れたか。一首の解釈については、これも引き続き、課題としたい。


(2016.11.22 記)

関連記事
NEXT Entry
『六花』VOL.1 を読んで(1)
NEW Topics
『歌壇』2018年12月号を読んで(2)
『歌壇』2018年12月号を読んで(1)
太田水穂書簡の読み方を訂正する
平岡直子の一首
『塔』澤辺元一追悼号について(6)
『塔』澤辺元一追悼号について(5)
『塔』澤辺元一追悼号について(4)
『塔』澤辺元一追悼号について(3)
『塔』澤辺元一追悼号について(2)
『塔』澤辺元一追悼号について(1)
コメント
Trackback
コメントを書く
 管理者にだけ表示を許可する
ブログ内検索
和爾猫より

和爾猫

Author:和爾猫
-
主に近現代の短歌について調べています。
同じ趣味の方がいらしたらうれしいです。

情報のご教示などいただけたら、
さらにうれしいです!

検索フォーム
最新トラックバック
QRコード
QR

CALENDaR 12345678910111213141516171819202122232425262728293031