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 西日本新聞の読者短歌欄における土屋文明の短評をいくつか見てみよう。転載された『熊本アララギ』1996年8月号と9月号から引く。

自衛隊に職を求めて二十年あはれ日蔭者の如き二十年
(評)君個人はそんな風に考へるに及ばず。


 「日蔭者」は吉田茂が防衛大学校の第一回卒業生に贈った言葉の中に出てくる。文明の評は手厳しい。元首相の言葉の借用に、一隊員としての生活を軽んじる似非思想を見たか。

安く売れといふありもうけよといふもあり都合よくやれといふ声もする
(評)オカメ評といふものはかうだ。かまはずやれと私も言はう。


 この一首を肯定しているのだろう。「かまはずやれ」は、文明の肉声が聞こえてくるようだ。

斯くきびしく生きゐる吾らある事を三島氏は知らず自決して果てぬ
(評)かういふ見方の者も少なくないだらう。私などもその側だ。


 この一首も肯定的に評価している。三島由紀夫の事件の直後に投稿された歌なのだろう。生活の実感から離れた思想に賛成しないのは、「あはれ日蔭者」への評とも共通する態度だ。客観を装うことなく、「私などもその側だ」と述べて発言の責任の所在を明示するところに誠実さを感じる。

数軒の借家を持てる女教師が「教育は趣味よ」と笑ひつついふ
(評)さういふ教師をもバカにしないのが真の教育者だらう。


 この文明の言葉にしびれた。「女教師」の同僚の作と見たのだろう。文明の態度は一貫している。

接木して五十余年の歳月がしだるる梅と吾とにありし
(評)梅と共なる五十年はめでたし。


 これは優しい。


(2016.9.9 記)

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