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 斎藤瀏が陸軍歩兵第十一旅団長を退いて予備役となり、熊本から東京に居を移したとき、親しい歌人たちが田端の会席料理店、天然自笑軒で歓迎会を開いた。集まったのは石榑千亦・宇都野研・太田水穂・尾山篤二郎・川田順・前川佐美雄・村野次郎・吉植庄亮と瀏の九名、1930(昭和5)年のことである。

 この会で、歌人たちは即興の歌や絵を残した。その寄せ書き帳は瀏に贈られたようで、後年斎藤史がエッセイ「寄せ書き帳」(『遠景近景』大和書房、1980年)で内容を紹介している。

任をへて剣を捨てたる将軍の大禿あたま夏の月照る  水穂

灯に照れる柱に寄れる禿あたまいづれあやめと引きぞわづらふ  順

あまてらすあたまのひかり神々しみきたてまつりわれは祝はむ  庄亮


 瀏の頭をからかって詠んだもので、笑いにまぶして瀏の退職を慰めいたわる気持ちが伝わってくる。順の一首は『太平記』の

五月雨に沢辺のまこも水こえていづれあやめと引きぞわづらふ


を踏まえて「柱も頭もきれいに光って見分けがつかない」とふざけたのだが、「異本撫でぞ」という書き込みもあるとのこと。場面を想像してみると、

  ——いや、将軍の頭は「撫でぞ」だ。(一同大笑)

といった感じだろう。史のコメントは、

 このあたりまでは、まずまずのにぎやかさだが、いよいよ興が乗り、印旛沼の近くに住む庄亮がさかなにされたらしい、


というもので、瀏の次は庄亮がからかわれたようだ。宴はさらに盛り上がり……。


     §


 史は「庄亮がさかなにされた」その歌自体は紹介しなかった。一体どんな歌だったのか——を探るのが実はこの記事の一番の目的である。瀏に対する歌人たちの友情に心が引かれて、つい前置きが長くなってしまった。


(続く)


(2016.8.24 記)

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