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 生徒らに待ち居よといひて炎立つ街にいで行く真相知らむため


 同四首目。全歌集の年譜によれば、8月6日は校内に「生徒と共に一泊」、翌7日に「生徒の家族を尋ねて市内に」入ったという。そのときの模様を題材にした歌だろう。一連のなかでは前後の文脈をつなぐことが主目的と見える、比較的地味な作りの一首。

 山隅自身は教員の職務を遂行した結果、入市被爆したことになるが、生徒らを校内に留めた判断は正しかった。

 電柱は立ちながら燃ゆ枕木は煙をはなつわが行く道に


 同五首目。前の一首を受けて、市内の光景を描写する。「枕木」は山陽本線のものか、あるいは広島電鉄の鉄橋上の枕木か。立ちながら炎に包まれる木製の電柱も、煙をたちのぼらせる枕木も、一枚の写真のように印象鮮烈で、自ら目撃しなければ詠めないと思わせる。

 小区間電車けふより開通すかぐろきまでの蝿も運びて


 同二十二首目。上句は、広電の市内線の一部が8月9日から運転再開したことを指す。

 運転再開の一番電車には十代の女性運転士が乗務した。この運転士は広島市内で被爆した後、山隅の勤務校に避難していた(堀本春野「復旧後の一番電車に乗務して」)から、山隅とも顔を合わせていただろう。

 「蝿」は町なかの遺体にむらがっていたものか。「かぐろきまで」という強い言い回しから、一、二匹どころでないように感じられる。上句は希望の、下句は恐れと不安の象徴表現のようにも感じられる。


(2016.8.18 記)

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