最新の頁   »   短歌一般  »  土屋文明記念文学館「現代女性歌人展」(4)花山多佳子・栗木京子
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 百人の女性歌人による色紙の自選一首はさすがに傑作、名歌揃い。それだからか、その一首について歌人本人が説明した原稿もほとんどすべて格調高く、立派な内容である。

 そんななかでは花山さんと栗木さんの原稿が平易で、逆に目立っていた。花山さんの色紙の一首は、

大根を探しにゆけば大根は夜の電柱に立てかけてあり

  (『木香薔薇』2006年)


 こういった題材の歌を選ぶことからして、ちょっと変わっている気がする。確かにしばしば引かれた歌だが、それにしても他の人が「全存在」「滝の裸体」「風花」などと歌っているときに、花山さんは「大根」。そして、説明文の冒頭は、

 夕食の支度にかかろうとして、買ってきたはずの大根がないのに気がついた。


である。この目線の低さ、肩の力の適度に抜けた感じが特徴だろう。読んでいる者の方が恥ずかしくなる、ということがない。しかも、花山さんの歌と文章は、そのただの大根が世界の秘密に通じる瞬間までつかまえてしまうのである。

 一方、栗木さんの一首は、

観覧車回れよ回れ想ひ出は君には一日(ひとひ)我には一生(ひとよ)

  『水惑星』(1984年)



 みんなが知っている歌を選んでくれるのがうれしい。こういうときにわざわざ誰も知らない近作を選ぶのは、芸術家のつまらないプライドでカッコわるいと思う。その点、栗木さんの姿勢はすがすがしい。

 そして、説明文には、

 ……この観覧車は大阪の枚方パークのもの。型は変わったが現在でも乗ることができる。


などとある。「枚方パーク」云々は初出の情報ではないかもしれないが、昭和の家族や若者の身近な遊び場所で名歌が生まれたことが慕わしい。


(2016.8.10 記)

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