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 梅内美華子『横断歩道(ゼブラゾーン)』(1994年)に

生き物をかなしと言いてこのわれに寄りかかるなよ 君は男だ


というよく知られた一首があるが、私は二十数年前、この結句「君は男だ」に「ああいやだ、いやだ」と思って以来、梅内の歌を何となく読まないようにしてきた。雑誌などでたまに見かける写真の梅内はスキのない麗人風であるし、とにかく苦手なタイプだと、まあ勝手に思い込んでいたのだった。

 ところが今週の日曜日、墓参の帰りに立ち寄った群馬県立土屋文明記念文学館でたまたま梅内の講演を聴き、印象一変。明るくハキハキと語ってゆくなかにときどきくだけた口調が混じるのがキュートで、ちょっとファンになってしまった。うーむ。

 この講演は企画展を記念して行われたもので、展示は春日真木子から梅内まで、ご健在の女性歌人百人による自選一首の色紙と自註の原稿。講演は、同じ百人の歌を梅内が別に一首ずつ選び、解説するものだった。会場はほぼ満席、熱気に驚いた。百人以上入っていたか。私が書き取った梅内の言葉を少し挙げておこう。

(日高堯子の一首「敗戦日 空また晴れて日晒しの青姦のやうな日本も見ゆ」を朗読して)かなり思い切った表現です。


 「青姦」という語を使って歌を作ることは、あるだろう。しかし、年配の方が大半を占めるフロアに向かい、マイクでもって朗々と「日晒しの青姦」を音読するのは、なかなか度胸が要る。この比喩の意味に関する解説がなかったのは残念だったが、さすがにはばかられるところか。

(小島ゆかりの一首《「死ぬときは一緒よ」と小さきこゑはして鍋に入りたり蜆一族》を朗読して)これ、「一族」がいいんですよ。「蜆の鍋」だったらつまんないです。「蜆の数十個」でもだめです。


 フロアの反応が一番よかった歌。「一族」という語を選択した作者は確かにすばらしい。でも、なぜすばらしいと感じるのだろう。

(俵万智『サラダ記念日』が刊行された三十年前、梅内自身が高校二年生だったことに言及して)自分のなかで三十年という歳月が流れたと思うと……めまいがしますね。


 その気持ち、わかる。私も梅内と同世代で、やはり高校生の時に『サラダ記念日』を買った一人だ。


(2016.8.4 記)


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