最新の頁   »   短歌一般  »  『塔』2016年4月号を読んで(6)松村正直「二枚の翅」
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コーヒーの黒き水面にふる雪の無音のなかに人は死にゆく

  松村正直


 この雪は粉砂糖などでなく(!)、本物の雪と読みたい。戸外でコーヒーのカップを手にしている図と解すると、まるでスーパーリアリズムの絵画のように静謐で美しい。

 「人は死にゆく」の状況がつかみにくく、やや唐突な結句と感じられるが、どうか。

美しき二枚の翅のはばたきの揺れるイランとサウジアラビア

  同


 ペルシャ湾を挟んで北側のイランと南側のサウジアラビアが対立して不穏なさまを「二枚の翅のはばたき」に喩えている。「はばたきの」の「の」は、「のように」と解すればよいだろう。こうした古歌のような言い回しを理知的に計算して使用するのか、あるいは計算以前に、自然に口ずさむものなのか、歌人に尋ねてみたい。

値の高きレタスの代わりに買いて来しキャベツはレタスの代わりにならず

  同


 たかだか数十円の差に(否、一円の差でも!)執着する庶民の生活の泣き笑い。私などももちろんその庶民の一人だ。

 二十代のほんの一時期キャベツ農家に住み込みで働いて以来、私はキャベツ贔屓で、そりゃあレタスとは違うよなと思う。あと、キャベツもいろいろで、レタスのように水気があってサラダ向きの品種もあるんですよ!


(2016.5.14 記)

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コメント
123
丁寧にお読みいただき、ありがとうございます。

1首目の「人は死にゆく」は確かに唐突ですね。歌を送ってから載るまで3か月かかるので、自分でもどうしてそう詠んだのか忘れてしまっていることもあります。

2首目はイランとサウジアラビアが断交したというニュースで見た地図を元に詠んだもの。蝶みたいな形をしていうんですね。3句目に「の」を使って軽く切れながらつなぐ方法は、割と自然に出てきます。

3首目、サラダ向きのキャベツもあるんですね! 知りませんでした。レタスにもキャベツにも、それぞれ向き不向きがあるとあらためて感じた一首です。

124
松村さん、こんにちは。コメントありがとうござます。以前にも話題にした気がしますが、松村さんの歌には特徴的な「の」が出てきますよね。なるほど、「自然に」出てくるんですね。

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