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 小川太郎の著書によれば、中城ふみ子が「自らに課せられた過酷な運命」をはっきりと自覚したのは、癌が再発し、二度にわたる手術を受けたときだった。幼なじみの親友を病室に呼び、しみじみと語り合う中で、ふみ子は

「離婚したこと、中絶したことも、乳癌の原因だったかもしれないわね」


と言った、という(『聞かせてよ愛の言葉を:ドキュメント・中城ふみ子』本阿弥書店、1995年。154頁)。

 このふみ子の発言に明瞭にみとめられる罪の意識は、『乳房喪失』(1954年)の一首、

メスのもとひらかれてゆく過去がありわが胎児らは闇に蹴り合ふ


につながるものとして興味深い。

 ただし、発言内容がそのまま歌の内容になっていないことには注意すべきだろう。両者はつながりつつ、同時に遠く隔たってもいる。

 病室での発言に沿って考えるなら、中絶や離婚の罪は、乳癌という罰を受けることで許されるのかもしれない。しかし、歌において、胎児と病とは因果関係を持たない。罪の象徴としての胎児は闇の中に残り、ことごとに母をとがめるだろう。


(2016.3.12 記)

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