最新の頁   »   葛原妙子  »  穀神の歌の追記
RSSフィード iGoogleに追加 MyYahooに追加

殺したるをみなの目より耳より粟・稗みのり垂れたる神話
   葛原妙子(『原牛』1959年)

陰に麦生り尻に豆生りし比売をりて男神に殺さえましし
   同(『短歌現代』1978年2月、後に『をがたま』所収)


 この二首を比べると、前の歌の方が完成度が高いようだ。技術は、やはり衰えるものなのか。後の歌は、「をりて」の辺りの調べに緩みがある。また、視点が明確でなく、感情移入が難しい。殺しと穀物生成の順序が逆さまのように感じられるのも不満だ。

 対して『原牛』の一首は、調べに一点の緩みもない。その上、第二、三句にかけてのリフレインと字足らずの組み合わせに新しい歌のリズムを探る実験の跡が窺えるのも刺激的だ。

 古事記の言い回しを借用しただけの「生り」に比べ、「垂れたる」は具体的で、より鮮やかな印象を喚起する。女神を殺した者の視点から「殺したる」というのも効いている。殺した相手の各部からたちまち穀物が生成する——そのさまを目にした者の驚きが伝わってくる。

 なお、古事記の当該の話には「稗」が出てこないが、日本書紀の同種の話では殺された神の目から稗が生まれたことになっている。


(2016.2.9 記)

関連記事
NEXT Entry
イチニントノデアイ
NEW Topics
『ねむらない樹』vol.5の訂正記事について(3)
『ねむらない樹』vol.5の訂正記事について(2)
『ねむらない樹』vol.5の訂正記事について(1)
ご挨拶
できんくなるかもしれん考
第一回BR賞並びに石井大成「〈ほんまのこと〉への機構」メモ
山崎聡子「わたしたちが身体を所有すること」メモ
「意志表示せまり声なきこえ」の解釈
『現代短歌』2020年5月号(特集 短歌と差別表現)について(9)
『現代短歌』2020年5月号(特集 短歌と差別表現)について(8)
コメント
Trackback
コメントを書く
 管理者にだけ表示を許可する
ブログ内検索
和爾猫より

和爾猫

Author:和爾猫
-
主に近現代の短歌について調べています。
同じ趣味の方がいらしたらうれしいです。

情報のご教示などいただけたら、
さらにうれしいです!

検索フォーム
最新トラックバック
QRコード
QR

CALENDaR 123456789101112131415161718192021222324252627282930