最新の頁   »   葛原妙子  »  砂子屋書房版『葛原妙子全歌集』の底本
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 『葛原妙子全歌集』というタイトルの本は、

  ・短歌新聞社版(1987年)
  ・砂子屋書房版(2002年)

の二種がある。どちらも編者は森岡貞香で、巻末に森岡の「解説」が付く。その「解説」冒頭はそれぞれ、次の通り。

《短歌新聞社版》
 本集は歌集『橙黄』、『縄文』、『飛行』、『薔薇窓』、『原牛』、『葡萄木立』、『朱霊』、『鷹の井戸』の各各の歌集の原本、及び第九歌集(未刊)『をがたま』を加えて、葛原妙子の歌集のすべてを収録したものである。

《砂子屋書房版》
 本集は歌集『橙黄』、『縄文』、『飛行』、『薔薇窓』、『原牛』、『葡萄木立』、『朱霊』、『鷹の井戸』の各各の歌集の原本、及び第九歌集(未刊)『をがたま』、『をがたま』補遺、それに昭和四十九年に刊行された三一書房版『葛原妙子歌集』に収録された『橙黄』を異本『橙黄』として加えて、『葛原妙子全歌集』とした。


 これを見ると、後者は前者を利用し、それに手を入れたものであるということが分かる。そこで気になるのは、砂子屋書房版が実際に「各各の歌集の原本」を底本としているのか、ということだ。もしかして、短歌新聞社版を底本とし、そこに同版未収の歌集・歌篇を追加しただけ、ということはないだろうか。

 結論をいえば、砂子屋書房版の底本はおそらく短歌新聞社版であって、「各各の歌集の原本」ではない。

石鳥よソドムの森より翔びきたりしかもきらめく尾羽をもてりき


 『飛行』(1954年)の一首。短歌新聞社版ではこの第一句に誤植があり、「石鳥ら」となっている。そして、砂子屋書房版もまた、「石鳥ら」なのである。

 砂子屋書房版は短歌新聞社版を底本とし、その誤植まで引き継いだと見るのが自然だろう。



(注) 短歌新聞社版の奥付に編者の記載はないが、「解説」に「葛原妙子様の御夫君輝様が本集の刊行にご賛成くださり、万事おまかせ頂いた……」とあり、実質的に森岡が編集の任に当たったと考えてよい。



(2016.1.10 記)


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