最新の頁   »   短歌一般  »  『短歌研究』2015年8月号を読む(4)三枝昂之『「短歌研究」戦後復刊号を読む』続続
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 今回の三枝の論考は『短歌研究』1945年4月号掲載の山脇一人の一首、

焼原となりし街衢は灰燼(はひ)ごしに×代橋も×大橋も見ゆ


の伏せ字について内務省が検閲し指示したもののように説明しているが、これは誤りで、実際は発行元・短歌研究社の自主規制だろう。

 内務省の検閲は事後検閲で、一部削除のやり方は伏せ字でなく、頁ごと切り取る形だったはずだ。第一、処分を受ければ版元は多大の損害を被り、発行人は前科一犯になる。同誌発行人として十数年の経験を持っていた木村捨録が空襲被害の地名を明示して処分を受けるような間の抜けた編集を許したはずがない。木村の回想記「私の中の昭和短歌史」11(『林間』1977年11月)を見ると、山脇の作に触れて、

 ××の伏字を使った検閲通過すれすれの作品であった。


としている。自主規制の伏せ字が効いて検閲を無事通過した、と読める。


     §


 ちなみに、この一首を含む山脇一人「焦土合掌」十首は、東京大空襲に材を取った短歌作品の最も良質なものだと思う。

ししむらの匂ひと知りて焼跡の灰原みちをゆくはさびしも
荒涼たる焦土瓦礫の原に来てひとのゆくへを探すはもとな


  (「焦土合掌」より)


 「ししむらの匂ひ」は、体験者でなければ詠めないところだろう。木村によれば、

 山脇の歌稿は十数首あったが生々しい数首を削って貰い……


とのことだ。その「生々しい数首」が今に伝えられなかったのが残念だ。

 自分の宣伝のようで恐縮だが、私は以前、この知られざる歌人の紹介を兼ねて「焦土合掌」を論じたことがある(『笛』2003年1月、3月)。


(2015.8.18 記)

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