最新の頁   »   斎藤茂吉  »  田中綾・中崎翔太「資料紹介 守谷富太郎の「アララギ」掲載歌」を読んで(4)
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 気になったことの二つ目、

吹雪して往来(ゆきき)とまれる籠(こも)り日(び)に蔵書目録つくりてたぬし


 この結句「たぬし」の「ぬ」に「ママ」と註記しているが、これもどうか。

 「たぬし」(=楽し)は昭和前期以前の『アララギ』などではしばしば使われた言い回しで、誤記でも誤植でもない。橘千蔭『万葉集略解』以来の伝統で、万葉仮名のうち、いわゆる上代特殊仮名遣いの「の」の甲類に当たる字を一般に「ぬ」と訓じていたのであり、それに倣い、音調を古風にする効果を狙って「たぬし」と詠んだのである。


     §


むつかしき業にいそしみ明けくれをあり経つつ我ら何を希はむ

  (『アララギ』1944年4月)


 紹介されている『アララギ』掲載歌の最後の一首。地域医療に従事してきた人の作と知って読むと、深く納得させられる。第四句の字余りが利いていて、全体の調子が軽く流れるのを防ぐ。「むつかしき業」という内容とよく合っているところが上手。富太郎の没年はこの五年余り後、1950(昭和25)年の由である。


(2015.5.23 記)

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