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 雨宮雅子『斎藤史論』(雁書館、1987年)に史本人の談話が付載されていて、そのなかに同時代の女性歌人について語った一節がある。聞き捨てならない内容で、興味深い。

 お年はわたくしより上だけれど、歌壇に出たてのころはひじょうにへりくだっていたのが、その後評判が出て、お会いしてもむこうが見くだすような態度になってしまった方。その方が、お家をほっぽって歌ひと筋だったので、歌をとったら悪妻しか残らないじゃないかといわれたとか。——でも、そうまでしてご自分を貫こうと一生懸命だったのだから、歌に賭ける執念でいえば、別の意味ではこれもご立派だと思うの。


 「歌に賭ける執念」を讃えたいのであれば、「見くだすような態度」「悪妻」などと言わなければよいと思うのだが、それを言わずにいられないということは、やはりその歌人のことをこころよく思っていなかったのだろう。

 「お年はわたくしより上だけれど、歌壇に出たてのころは」と言い、「その後評判が出て」と言い、「お家をほっぽって歌ひと筋」と言う。ここに、自分より歌歴が短いのに自分より高い評価を受ける者への嫉妬心を私は読み取る。

 さて、史がそこまで意識していた相手は誰だろう。


(2015.4.16 記)

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