最新の頁   »   アンソロジー  »  永田和宏『現代秀歌』覚書その5:省線電車の歌(1)
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 福島泰樹の歌から本書は、

ここよりは先へゆけないぼくのため左折してゆけ省線電車

  『バリケード・一九六六年二月』(1969年)


を採る。これも著名な一首。永田の評は、

 若い学生である福島にあって、「省線電車」などという明治時代の呼び名が出てくるところがおもしろいが、彼が江戸っ子であることにもかかわっていよう。(140頁)


 アラ探しをするようで恐縮だが、「明治時代の呼び名」はひどい。鉄道省は1920(大正9)年発足で、その前身は鉄道院だから、省線が明治時代の呼称であるはずはない。かつ、国有鉄道が省の直轄でなくなったのは1949(昭和24)年からで、それまでは名実ともに省線であったわけだから、全く耳遠い言葉ということでもなさそうである。呼び名は新しい「国電」より使い慣れた「省線電車」の方がしっくりくるという人も、60年代にはまだいたのではないか。

 そう考えると、「江戸っ子」の指摘がむしろ興味深い。福島の周辺に「省線電車に」云々とおしゃべりをする大人たちのいたことが推測できるからである。「若い学生」である福島自身が日常会話のなかでこの語を使っていたわけではないだろう。この語の使用には、時代遅れか何かの気取りを読み取ってもよいのかもしれない。


(2015.2.1 記)

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