最新の頁   »   アンソロジー  »  永田和宏『現代秀歌』覚書その1:誰を選んだか(3)
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 1890年代、つまり明治22年からの十年間だが、この年代生まれはそもそもどのような顔触れなのか。『名歌名句大事典』から生年順に抜き出してみよう。

・今井邦子(1890年) ・植松寿樹(1890年)
・土屋文明(1890年) ・杉浦翠子(1891年)
・水町京子(1891年) ・芥川龍之介(1892年)
・斎賀琴(1892年)  ・西村陽吉(1892年)
・大熊信行(1893年) ・望月麗(1893年)
・結城哀草果(1893年)・岡山巌(1894年)
・小泉苳三(1894年) ・橋本徳寿(1894年)
・渡辺順三(1894年) ・土田耕平(1895年)
・松倉米吉(1895年) ・松田常憲(1895年)
・山下陸奥(1895年) ・岡野直七郎(1896年)
・川上小夜子(1896年)・館山一子(1896年)
・宮沢賢治(1896年) ・中村正爾(1897年)
・早川幾忠(1897年) ・藤沢古実(1897年)
・鹿児島寿蔵(1898年)・五島美代子(1898年)
・高田浪吉(1898年) ・阿部静枝(1899年)
・筏井嘉一(1899年)


 専門歌人でない芥川龍之介や宮沢賢治らはしばらく措く。直前の1880年代生まれに斎藤茂吉・北原白秋・若山牧水・石川啄木・吉井勇・釈迢空といった面々が揃っているのに比べると、およそ地味な印象であることは否めない。土屋文明だけは別格だが、世代としてはむしろ1880年代組の掉尾に加えるべき人か。


     §


 さて、なぜ1890年代生まれの歌人にいわゆる大物がいないのだろうか。推測するに、1880年代組の茂吉・白秋らがあまりに偉大であったため、1890年代生まれは先達を敬愛すること厚く、自身は結局小さくまとまってしまったものか。また、彼らが新進・中堅であった時期にプロレタリア文学運動が盛んになったこと、それがほどなく弾圧されたことも影響しているのかもしれない。


     §


 それにしても、『現代秀歌』に1890年代生まれが二人のみとは、他のアンソロジーと比べてもことに少ないようだ。選者によっては、例えば1940年代生まれの歌人を永田が好むほどには好まず、代わりに永田の選ばない結城哀草果や筏井嘉一を選ぶだろう。


(2015.1.25 記)

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