最新の頁   »   短歌一般  »  『率』4号を読む(1)吉田隼人
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 2013年11月24日発行。奥付に「通常版」とあるので、別に特装版のようなものも出しているのだろう。幾何学模様の表紙絵(唐崎昭子)が美しい。出詠者、七名。私は初めて作品を読む人ばかり。

肋骨をかぞふるごとく愛撫して指は蛆虫よりよくぶかき
ちり紙にふはと包めば蝶の屍もわが手を照らしだす皐月闇
開花すなはち蕾の否定さみだれに打たるるあまり甘たるき香を
涙腺といふせせらぎがあなたにもわたしにもあり露草あをし


  吉田隼人「blue et azur」



 本誌では、美意識を最も感じさせる歌群。光と闇、生と死、肯定と否定の間で認識と感情がたちどころに反転し、また反転する。その揺れ幅の大きさが、何か若々しい。ことに惹かれたのは一首目。指を蛆虫と比較した瞬間に、性愛の対象のイメージが屍体のイメージと重なって感じられる。私の恍惚、を冷たく認識するもう一人の私、のさらなる恍惚、というような感じ。

 一連の作のところどころに西洋哲学の日本語訳風の言い回しが見える。三首目の「〜の否定」もその類と思われるが、それでもって「花」という和歌以来の主題に挑んでいるところにおもしろみがある。結句「甘たるき香を」は、漂わす等の述語を省略した表現なのだろうが、やや分かりにくいか。

 四首目は主題を、涙腺=せせらぎ、というような認識の組み換えにとどめることなく、露草の美の表現にまで繋げたことで、印象的な一首になった。


(2014.10.5 記)

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