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 グリーン車アテンダントは夏草のほほゑみをうかべわれに近づく

   小池光(『短歌』2013年9月号)



 おもむろに近付いてくるその人の微笑みが、何かひどく怖い一首ではないか。

 グリーン車はJRの優等車両。「アテンダント」は、
 

 東日本旅客鉄道(JR東日本)の普通列車・特急列車のグリーン車に乗務する客室乗務員。JRではなく日本レストランエンタプライズの従業員である。

  (ウィキペディア「グリーンアテンダント」の項)



とのこと。このアテンダントの大半が女性だから、掲出歌でも女性アテンダントを想像してよいだろう。

 そのアテンダントが「夏草」のような微笑みを浮かべて、乗客たる「われ」に近付く。夏草のような微笑みとは? グリーン車の「緑」が夏草の語を引き出すのだろうが、それにしてもアテンダントさんは微笑みにどんな意味を含ませたのだろう。夏草のイメージは、濃厚・盛ん・たくさん・生命力・太陽・暑い・ギラギラ……。

 アテンダントの一般的なイメージ——優雅?——よりも、それはもっとずっと強烈なもののようだ。しかし、アテンダントさん本人としては、ただ職業的に訓練されたとおりの表情を作っていただけかもしれない。そのイメージは、むしろそれを受け取る「われ」の感情が反映したものだったかもしれない。

 列車は宇都宮線や常磐線あたりの普通列車か。「われ」はグリーン券を購入した客ではなく、乗るつもりのなかったグリーン車に何かの拍子に飛び乗ってしまった客、と私は見る。プラットホームの一番乗りやすい位置にグリーン車が停まっているというのは、よくあることだ。怖いけど、可笑しい。

 誤解だったらごめんなさい、小池さん。


(2014.8.12 記)

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