最新の頁   »   短歌一般  »  一ノ関忠人「成瀬有の願い」について
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 切り抜いておいた一ノ関さんの文章「成瀬有の願い」(朝日新聞、14日付)をあらためて読む。昨年亡くなった成瀬有について書いたものである。新聞のコラムなので短文だが、内容はよくまとまっている。いわく、

サンチョ・パンサ思ひつつ来て何かかなしサンチョ・パンサは降る花見上ぐ



の一首が代表歌であること。岡野弘彦に師事し、釈迢空・折口信夫をつねに意識していたこと。晩年の歌や論が広くは読まれなかったこと。未完の迢空論で明らかにしようとしたのは、

 ……現在の口語の叙述文体への危惧であり、より豊かな未来の短歌への希望であった。



等々。

 ここから議論のテーマを引き出すこともできるだろう。「現在の口語の叙述文体への危惧」とは、つまり文語への愛着か、それとも「現在の口語」の文体とは異なる、新たな口語の文体への憧憬か。前者なのであろうが、そこで不思議なのは、成瀬自身も気に入っていたらしいサンチョ・パンサの歌がおよそ文語的でないことである。「かなし」や「見上ぐ」は、口語の語尾だけを文語風に変えてみた、という程度のものだ。一首の文体は古歌とはまるで違うし、迢空とも似ていない。

 歌と論とは必ずしも一致しないということか。あるいは、サンチョ・パンサの歌が成瀬の他の歌とは違うのか。


(2013.10.19 記)

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