最新の頁   »   中城ふみ子  »  中井英夫が中城ふみ子に付き添った夜は月夜であったか
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 前の記事で取り上げた尾崎左永子「月光下の沈黙」によれば、中城ふみ子の病室に中井英夫が泊まった夜は月夜であったという。

 中井の札幌滞在は1954年7月29日から8月1日まで。以前の尾崎の発言には、中井がふみ子からの「電報で呼び出されて」ともあり、さすがに初対面の日にそういうことにはならないだろうから、中井が病室に泊まったのは、30日か31日。

 今はまことに便利な世の中で、六十年前の月の満ち欠けもウェブ上でたちどころに知ることができる。「こよみのページ」というサイトで調べると、なんと1954年7月30日は新月。この日も、次の日も、実際は闇夜であったわけだ。

 おそらくは、暗闇にほのかに浮かんだふみ子の姿が中井の記憶のなかで無意識のうちに美化されて、現実とは異なる「美しい月夜」の話になった。そして、この夜の思い出が中井にとって必ずしも美しいものではなくなった後も、すでに一つの真実として記憶に定着していた月光という舞台装置は、取り外されることなく残ったのだろう。


(2014.7.28 記)

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