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 『中井英夫詩集』(現代詩文庫、思潮社)を読んでいて、次の詩に目が留まった。

  
   中城ふみ子に

オルゴールがとまらうとするときの
たゆげな響きのなか
妹よ
お前の手で鍵はもつとも輝いた

水鳥のやうに叫んでゐよう
「どうしてそんなに小さくなつてゆくのだ!」
いま襲はうとするものが誰かを決して考へぬ死よ
せめて少女だけは踏んでゆくな

その日
からだのなかですべては終つた
薔薇は髪からころげおち
素早い手が灯りを消してしまつた   54・8


 一読して、この詩はどこか自然でないという気がした。不審な点はいくつかあるのだが、一番は第二連冒頭の「叫んでゐよう」だ。これは作中主体が自身に呼びかけた言葉と解するほかあるまい。しかし、わざわざ「叫んでゐよう」とみずから確認しなければ叫べないとは、いかにも醒めている。叫ばれる言葉——どうしてそんなに小さくなつてゆくのだ!——の切実さとそれとは、まるで釣り合っていない。

 なぜこんな詩になったのだろうか。


(続く)

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