最新の頁   »   新芸術派(石川信雄・斎藤史・前川佐美雄)  »  前川佐美雄『植物祭』初版本の誤植(3)
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 初版『植物祭』の「正誤表」がそれである。『植物祭』刊行の翌月、『心の花』1930年8月号に掲載されたものだ。その全内容を次に写しておこう。


 序文  2頁2行(誤)欧洲     (正)欧州
 本文 50頁1行(誤)もう     (正)まう
    66頁1行(誤)日あれと   (正)日もあれと
    115頁4行(誤)かたちのみちの(正)かたちのみの
    205頁3行(誤)むかしわれが (正)むかしのわれが
    206頁3行(誤)掘とる    (正)掘ると
    213頁5行(誤)もう     (正)まう
 後記 5頁12行(誤)新しらく   (正)新らしく


 見てのとおり、①②③のいずれについても、増補改訂版の本文がすでにこの正誤表の正の欄に記してある。それらは、初版のときからそうあるべきだった本文、ということになる。

 筑摩書房版『現代短歌全集』や二種の『前川佐美雄全集』は、当然ながら収録する作品に対して校訂を施している。③の「掘とる」を「掘ると」に改めたのは、その一例にほかならない。そうであるなら、①と②についても、底本の誤植を正して、それぞれ「かたちのみの」「むかしのわれが」の形を採るべきだった。編纂者は、この正誤表の存在に気付いていなかったのだろう。

 なお、66頁の一首の訂正も興味深い。初版の本文は、
 

海越えて幾万のばつたが充ち来らむそんな日あれとせちに待たるる



であるが、正しくは
 

海越えて幾万のばつたが充ち来らむそんな日もあれとせちに待たるる



だったことになる。「せちに」の切実さを活かすためには「も」が入らないほうがよい気もするが、どうか。

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コメント
37
こんな正誤表があるとは!
これは決定的な証拠(?)ですね。
歌集の正誤表が結社詩に載るというのも、今ではほとんど見かけない気がします。

「海越えて」の一首、僕は「日もあれ」の方が好きです。一音余ることによる韻律の溜めが効いていると思いました。

38
読んでくださってありがとうございます。
『植物祭』は案外研究が進んでいなくて、
歌の読みもまだまだこれからという気がします。

松村さんは「そんな日もあれ」のほうに票を入れるのですね。
そもそも佐美雄自身がそちらのほうですから、私は分が悪い。

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