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 斎藤史は父瀏の転勤で1927年4月から30年3月まで、ちょうど丸三年ほど熊本市で暮らした。数え一九歳から二一歳にかけての頃である。初め内坪井町九三番地に住み、28年3月頃大江町九品寺五九七番地に移った(『熊本歌話会雑誌』1928年1月号および3月号)。晩年に史が「ばか広かった」と振り返っている(『熊本日日新聞』1991年1月6日付)のは後の家のようだ。

 将軍は安永氏の世話で九品寺町のある豪華な家へ移られた。将軍の御家族は将軍と奥さんと今の史子女史と三人のお暮しなのに家は三棟位あつて庭には草木が生い茂つてとても広かつた。


との証言(大林武之「斎藤先生を偲びて」、『短歌人』1953年10月)もあるから、よほど豪壮な屋敷だったのだろう。次の図は1928年1月10日発行の『実地踏測番地入り早わかり熊本市街地図』(訂正第6版、土橋南江、部分)。

大江九品寺597

 中央の赤線が電車通りで、赤丸が市電の大江車庫前駅(現交通局前停留場)。この通りを西に進むとすぐに大甲橋、水道町、東に進むと水前寺に至る。「演武場」と表示されただだっ広い空白地帯の大部分は熊本製糸工場の敷地で、ここは現在はイオン熊本中央店等の大型商業施設となっている。

 さて、その空白地帯の左隅に「597」とあるのが見える。すなわち大江町九品寺五九七番地である。ただ、そこは工場に隣接した比較的狭小な土地だったはずで、「豪華な家」の所在地としてはやや違和感がある。

 一方、電車通りを挟んだ向かい側には「596」「557」「599」と番地が並んでいる。この「557」が「597」の誤記だとすると、お屋敷の所在地としてはそれほど違和感がない。ここに斎藤家の借家があったと私は推定したいのだが、どうだろうか。

DSC_05742.jpeg

 こちらの写真は2021年10月に撮影したもので、中央右のコインパーキングと八階建てマンション等が上の地図の「557」に相当する場所である。写真には写っていないが、向かって左方向に進むとすぐに交通局前停留場がある。

 なお、熊本製糸工場の敷地の周辺一帯は「演武場跡」と呼ばれており、そこに歌友の安永信一郎・春子夫妻の家があった(安永信一郎『熊本歌壇私記』1978年、67頁)。瀏が新しい借家を探していると聞いて、安永信一郎は自宅の近所にあった家を紹介したのだろう。

 ちなみに、安永家の長女蕗子は当時尋常小学校二年生。後年、史に匹敵する著名歌人となる。


(2023.6.25 記)

 出征中の斎藤瀏に熊本歌話会が慰問品を送ったことを拙稿「歌人斎藤史はこの地に生まれた」⑤(『歌壇』2021年11月)に書いた。1928(昭和3)年5月の話である。さて、その慰問品の中に〈園田屋の柿牛皮〉というのがあったのだが、その園田屋、今もかつてと同じ熊本市南坪井町の店舗で営業している。

IMG_7823.jpeg

 現在の外観(2022年5月撮影)。店の人に伺ったところ、西南戦争の後に建てた建物だという。歌話会の内田守人らも、この建物の中で柿求肥を買い求めたわけだ。

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 こちらは店内。奥の二枚の引戸は、ガラスも建築当初からのものだそうだ。手前側の引戸は、あるとき強風でガラスが割れてしまい、新しいガラスに換えたのだとか。

IMG_7846 (1)

 これが柿求肥。噛むと甘味が口の中に広がって美味しい。


(2023.6.18 記)


 4年前に歌壇界隈でもいわゆる#MeTooの告発がなされていたのだという。先月4日まで、私は何も知らなかった。その日、『羽と風鈴』批評会の二次会でその話を耳にして、初めて知った。〈被害女性〉から情報提供を受けた中島裕介さんが代理でウェブ上に公表したのだという。

 私は帰宅後、中島さんのブログ「Starving Stargazer!」を検索した。しかし、当該記事と思われる「……#MeToo (1)」は非公開となっていた。そこで後日、その記事を保存していた某氏に頼み、本文全体を読ませてもらった。さらに、加藤治郎さんのnoteの記事「#MeToo問題をめぐって」(2019年12月15日付)を読み、それに反論する中島さんのブログ記事「12月15日の加藤のnote記事について」(2019年12月17日付)をも読んだ。

 中島さんの最初のブログ記事が現時点で非公開になっていることから、私見をここに詳述することは差し控えたい。ただ、上記の記事を見る限りでは次の四点を認め得るということのみ、心覚えのために記しておく。

① 当事者の二人は同じ結社に所属し、男性の選歌欄に女性が出詠する関係(=師弟関係)だった

② 二人は恋愛関係にはなかった

③ 男性が女性に対して問題の行為に及んだこと自体は男性も否定していない

④ 争点はその行為についての同意の有無だけである


 非常に重大な問題だと思う。告発された#MeTooが真実であるなら、男性の行為は女性に対する明確な人権侵害だ。逆にその#MeTooの核心部分が虚偽であるなら、それは男性に対する深刻な名誉毀損だろう。ただし、④に関する男性の主張は曖昧で弱いように私には感じられた。正直なところ、私の心は女性の主張を信じる方に傾いている。

 なお、①の事実はこの一件が個人の問題にとどまらず、彼らの所属結社の問題でもあることを示している。当該結社である未来短歌会の公式サイトを見ると、2019年11月30日付「理事会報告」に、

当会一選者のハラスメントに関わる事案が理事の一人から提議されました。/事実確認の方法を模索しているところです


とあるのが確認できる。中島さんのブログ記事「12月15日の加藤のnote記事について」によれば、「当会一選者のハラスメントに関わる事案」とはこの#MeTooのことだという。同じページをさらに見ていくと、2020年1月12日付で

ハラスメント委員会が発足いたしました。/現在、当事者及び関係者に見解を聞き、事実関係の確認を進めております。


とあり、2020年1月19日付で

相談窓口を設置致しました。


とある。また、2022年7月21日付「未来短歌会ハラスメント委員会よりお知らせ」として「ハラスメント防止ガイドライン」と「「ハラスメント相談フロー」が掲示されている。

 ただし、発端の#MeToo問題自体は上記の2020年1月12日付記事の〈現在、当事者及び関係者に見解を聞き、事実関係の確認を進めて〉云々以降、特に進展がないようだ。だからと言って、いずれ人がこの問題を忘れ去ってしまうかというと、それは違うだろう。少なくとも、私はこの先ずっと覚えていると思う。4年前の#MeTooの告発内容が真実だとすると、現状のままでは被害女性の尊厳が回復されない——との問題意識は私の中にとどまり続けるだろう。一応の決着に向けて男性側が真摯に応対するなら、それは長い目で見て男性自身のためにも望ましい決着となる気がするのだが、どうだろうか。

 〈健やかで優しい文学の場を未来へ送り届けるよう努める〉とは加藤さんのnoteの記事の一節だが、こういう無意味なポエムが誰の得にもならないことだけは確かだ。


(2023.6.11 記)


 引用文を一部差替えた。


(2023.6.12 追記)


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