最新の頁   »  2014年02月13日
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 前の記事で斎藤史の昭和十年代の文章「第七十七議会の印象」を取り上げたが、その第七十七回臨時帝国議会開院式の挙行を報じる当時のニュース映画が残っている。NHK「戦争証言アーカイブス」でそれを視聴して、ちょっとおもしろく思ったのは、アナウンサーが

  ダイ シチジュウシチ カイ

と言っていることだ。これがこの時代の標準的な読み方で、今日の標準語の

  ダイ ナナジュウナナ カイ

という読み方とは異なるのだ。仙台市に本店がある七十七銀行は今でもシチジュウシチギンコウだが、これは明治初期に第七十七国立銀行として設立されて以来の読み方を受け継いでいるためだ。史の文章のタイトルも、当時の読み方を尊重するなら、「ダイ シチジュウシチ ギカイ」だろう。

     §

 尾崎翠が1931(昭和6)年に発表した「第七官界彷徨」という小説があるが、石原深予さんの論文がその「第七官界」の読み方に言及している。

 尾崎翠も観た映画「第七天国」(一九二七年製作・日本公開)の訓みは、『近代用語の辞典集成』(一九九五〜一九九七 大空社)に収録されている各種モダン用語辞典によると、「ダイシチテンゴク」である。質屋の隠語として「第七天国(ダイシチテンゴク)」という語が用いられていたという。「第七官界彷徨」は、現在「ダイナナカンカイホウコウ」と訓まれるのが通例であるが、「第七天国」の当時の訓みを考慮すると、作品発表当時は「ダイシチカンカイホウコウ」と訓まれていた可能性もある。

(「「第七官」をめぐって:尾崎翠「第七官界彷徨」における回想のありかた」、『和漢語文研究』11号、2013年11月)



 質屋の隠語になっていたという話が本当なら、『第七天国』はたしかにダイシチテンゴクでないといけない。旧制の第七高等学校はダイシチコウトウガッコウ、帝国陸軍の第七師団はダイシチシダンである。「第七官界」も、発表当時の標準的な読み方としてはダイシチカンカイなのだろう。

 ちなみに、陸上自衛隊の第7師団はダイナナシダン。海上保安庁の第7管区海上保安本部はダイナナカンク。しかし、読み方の標準がいつ、どのようにして変わったのかは寡聞にして知らない。

 こういう話題は、アナウンサーが詳しい。参考として、読売テレビの道浦俊彦アナのエッセイを二本、挙げておく。

(1)NHKアクセント辞典に見るシチとななの変化
(2)七奉行の読み方

     §

 現在IVCから発売されている『第七天国』のDVDには、淀川長治さんの解説映像が入っている。それを観ると、淀川さんはダイナナテンゴクと読んでいる。淀川さんはこの映画を公開当時に観た人だが、そのときからダイナナと読んでいたのだろうか? 関西では早くから「シチ」より「ナナ」の方が優勢だったという説を聞いたことがある。神戸生まれの淀川さんだから、ダイナナだったのかもしれない。

 ついでにいえば、IVCの『第七天国』は淀川さんの映像が付いていることだけが取り柄で、あまりよい商品とは言えない。著作権の問題があるせいか、音楽はまるで関係のないものが使われている。主題曲が有名なので、残念。また、なぜかクレジットタイトルもオリジナルのものではない。

 主題曲を使った動画のリンクを貼っておこう。切ない気分に浸れます。





(2014.2.12 記)

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Author:和爾猫
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